MIYABIの部屋

いつの日もこの胸に流れてるメロディー

レビュー『花散らしの雨 みをつくし料理帖』

 

高田郁著『みをつくし料理帖シリーズ』
第2段・花散らしの雨
前作「八朔の雪」でつる家を目の敵とする登龍楼の妨害と焼家の末、閉店に追い込まれた澪達は、新境地に新生つる家の看板を掲げ、種市・ご寮さん・おりょうさんに加え住込みの下足番に13才の不幸な生い立ちの少女ふきを迎え、新たな門出を踏み出したのです。

※なるべくネタバレしない様に、注意して備忘録を残したいとは存じていますが…未読の方はご注意の上で御閲覧ください※

以下レビューです
俎橋から―ほろにが蕗ご飯
時系列の季節は春。
徐々に客足も増え、澪はお客様に喜んで頂ける旬の食材の献立てに試行錯誤の日々を送るのですが、どういう訳か澪の創作料理は全て登龍楼の二番煎じに回るという事態が起こり、澪とつる家一行はふきの不審な行動に各位不安を抱くのですが・・・

花散らしの雨―こぼれ梅
店先で行き倒れていた味醂の行商を介抱した澪は、留吉と名乗る青年の大事に抱える瓢箪から馨る香りに、幼馴染みと過ごした日々を思い出し今はあさひ太夫として遊郭に身を置く、親友 野江を案じるのでした。
上方では味醂の絞り粕をこぼれ梅と呼び主に女性や子供に好まれたとか。
この章は終始、涙がこぼれました(*T^T)

一粒符―なめらか葛饅頭
男はつらいよ」でお馴染みの葛飾柴又帝釈天は400年も昔から病即消滅のご本尊として広く信仰され“一粒符”と言う風邪封じの飲む御守りがあります。
おりょうの子息太一が麻疹を患い、澪と芳も総出で看病にあたるも罹患経験のない義母のおりょうが感染し生死をさ迷う窮地に直面…。

銀菊―忍び瓜
猛夏、胡瓜の酢の物が連日評判なのに対し武家の客足が途絶え、戸惑う澪。
何でも胡瓜の切り口が徳川の御紋と酷似している理由で口にしないのだと、暫くぶりに店に顔を出した小松原がいつもの軽口を叩きながら澪に助言してくれるのです。
久方ぶりに再会した想い人を前に、料理人として生きて行く覚悟で押し殺してきた淡い恋心が澪の胸の中で一段と意識し始めるのでした…。

奉公人で在りながらも護られてきた側から、
店の看板を背負い護るものを得た事によって心なしか澪が料理人として、
1人の女性としても成長が感じられました。
愛嬌ある八の字の困り眉をキッと吊り上げ筋を通す澪の姿に目頭が潤みます。
標題作では電車にも関わらずうっかり涙してしまい焦りました(´□`;

時代劇に有りがちな悪役や災難が些かステレオタイプではありますが…
こういう人情ものは大好きです。
そして何より料理の描写が湯気立つ炊きたてのお米やコトコトと金柑の煮える香りや音まで聞こえて来そうで、咽が鳴ります(*´ェ`*)
 
次回作「想い雲」に続きます・・・
『花散らしの雨 みをつくし料理帖』★★★★★