MIYABIの部屋

いつの日もこの胸に流れてるメロディー

レビュー『壬生義士伝』

 

取引先の方にお勧め頂いた『壬生義士伝』、
浅田次郎さん初めての時代小説だそうです。
 
実は映画でしか観た事ありませんでした。

 
新選組といえば土方歳三沖田総司、局長の近藤勇が先ず頭に浮かびますよね。
この小説の主役は吉村貫一郎
浅田先生のご長女が岩手の大学に通われたのが契機で、盛岡藩士を主役にした本作を制作されたと聞きました。

吉村貫一郎について
池田屋騒動以降、京で新選組の名が一躍有名になった頃に入隊した盛岡南部脱藩の隊士、実在の人物ではあるが詳細は不明。
名門 北辰一党流の免許皆伝者で永倉 斎藤に匹敵する剣の使い手なのだが、如何せん金への執着が異常であるが故
守銭奴」、「出稼ぎ侍」、「恥さらし」等隊士からの心象は著しくない人物であった。

鳥羽伏見の戦で混乱に紛れ命からがら古郷に逃げ延びた貫一郎に、
組頭で旧友の大野次郎衛門は非情にも切腹を命じるのです。
“家族のもとへ帰るまで死ねない”
満身創痍の身体と、武士道とは相反する生への渇望。

…ん?こんな話をどこかで見たような。

第一次大戦を目前に控えた大正の某日。吉村貫一郎を尋ねて回る1人の新聞記者。元新選組隊士や剣術の教え子等、縁者へのインタビュー形式で、少しずつ吉村の人物像が形を成していきます。

そうです!映画化もされた百田尚樹氏のベストセラー『永遠の0』は壬生義士伝のオマージュとして書かれております。

映画や小説を御覧になった方には、内容は云わずもがなとは思いますが…。ハンカチ必至の1冊でございます。

斬った張ったの修羅の世界で、1人の侍が見せた家族を想う心。
主君に報いる為の死は望まず、士道に背いて迄渇望する生への執心。

――ならば何故人を斬る――
「斬らねば自分が斬られるからだ。死にたくなかったら先に斬れ。家族の元に帰りたいなら先手を取れ」

東北訛りと温厚なその細面からは想像が付かない凄腕必殺の鬼の剣。
先に映画を観ていたせいか吉村を演じられた中井貴一さんの影が重なり…
下巻に至ってはボロ泣きでした(T台T)

お馴染みの新選組幹部達との挿話にも、局長 副長 隊長各々に敬意を持ってキャラクターが描かれ、“やっぱ新選組が好きだー‼‼”って叫びそうになっちゃいます。

昔語りに登場するのは無名の平隊士だけでなく、吉村貫一郎が心の底から嫌いだったと豪語する新選組三番隊組長 斎藤一
慈愛を忌み嫌う斎藤とは対称的な吉村との、剣と剣とで交わした会話から鑑みるに斎藤さん…
吉村さんの事大好きだったんじゃん(;´Д⊂)

最初は南部訛りが読み難かったりもしたのですが、例え身は遠く離れても生まれた郷の言葉を、古郷の景色や山も川も草花も、そして家族を誇れるって素晴らしいですね。

今でこそ生まれ故郷の為に命を張るという事は有りませんが、生まれた地や家族を護り抜く為に戦う事こそ「義士」なんですね~。

そして親が親なら子もなんとよく出来た倅なんでしょう(´TωT`)
うっかり電車で読めないよ~~~。

下巻の函館戦争の折、作中で土方歳三の遺体を埋めたとある五稜郭の土饅頭の場所を先日の旅行の際に訪ねて参りました。
※諸説ありますがこの下に歳さんは眠っているのでしょうかね。。。

 

ちょっと脱線しましたね^^;
もっと熱い想いを書きたいのに。
もっと沢山良さを伝えたいのに。私の語彙が乏しすぎるが故、何ともおもさげなござんす。お許しえってくだんせ(涙)
 
後から知った話ですが作中の無名の新聞記者とは『新選組始末記』の著者、子母澤寛先生の事をお書きになったそうです。
何と感慨深い・・・(;ω;)

今週末から中井貴一さん主演映画「柘榴坂の仇討」が公開ですね☆
しかも私の好きな阿部寛さんのW主演で、原作は浅田次郎先生という…。これは是非とも観に行かねば!!!

壬生義士伝』上下巻 ★★★★★