MIYABIの部屋

いつの日もこの胸に流れてるメロディー

レビュー『秋の牢獄』


恒川光太郎著『秋の牢獄』を再読しました。
時節的にジャストナウな装丁と
秋の気配漂う珠玉の3作を収録した短編作品です。
主人公がある囚われた異空間の駕の中に棲む鳥のような…
何とも不思議でちょっと薄暗い怖さを感じさせる3つの物語。

以下、大まかなあらすじです。

第1章「秋の牢獄」
今日という日と全てが同じという日は2度と来ない。
辛い事があっても、明日の小さな幸せを祈り 日一日を生きている。
女子大生の藍は正確な回数が自分でももう判らなくなっている
"11月7日 水曜日"を延々とループする。
この世界には藍と同じ境遇のリプレイヤー達が数多く存在し、この世界を支配する神出鬼没の“北風伯爵”の影に怯えながら日付と言う囚われた檻の中で、まだ見ぬ明日の訪れを待っている…

第2章「神家没落」
しがない会社員の“ぼく”は酒に酔った自宅への帰り道、近道の路地に入ったはずがどう言う訳か、神域の中へと迷い込んでしまった。
住宅街に不調和な茅葺き屋根の古民家へ、翁のお面を被った男に迎え入れられた刹那…囚われた敷地という檻の錠が掛けられた。
一定間隔でランダムに出没するその家を出る術は、新しい身代りを招き入れることで晴れて自由放免の身となる。
屋敷に拘束される代償に、俗世のしがらみから解放されたぼくは…

第3章「幻は夜に成長する」
獏という人間の悪い夢を食べてくれると言う空想の動物がいる。
生まれた時から神憑りな幻術を操る少女リオ。
その力を利用する為、悪い大人に暴力で支配された空間という檻に幽閉された彼女は、人間の味わった辛酸を身体伝いで吸収し、幻を見せる事で救済するという役目を強いられている。
その苦痛を彼女にしか見えない禽獣に食べさせ、やがて街1つ呑み込む迄に成長した獣を見たとき少女は…
 

恒川氏の処女作夜市が肌に合う方は、もれなく好みだと思われます。
私は「神家没落」が作者の世界観満載で好きですね~(*´ω`*)

1つの話が数十頁弱で完結してしまうのが勿体無いストーリー性と、余韻を残した幕引きが作者の筆力の為せる業とでも言いましょうか…お薦めです!

だんだん街路樹も秋の装いに色づき始めてきましたね♪
紅葉狩り&秋の行楽に本をお供にお出掛けがしたくなります♡

秋の読書週間の1冊に加えてみては如何でしょ♪(*´ー`*)
『秋の牢獄』★★★★★