MIYABIの部屋

いつの日もこの胸に流れてるメロディー

レビュー『百年法 』


山田宗樹著『百年法 』上下巻(角川文庫)
単行本の時からずーっと気になっていました。
文庫化したのを契機に購読。
名だたる著名人から寄せられた賞賛の帯文に期待して読み始めましたが、ナルホド評判通りの面白さでした!
書評サイトでも高評価のようですね☆

※以下はネタバレを大きく含みます。
これからお読みになる方は御注意ください
 

【生存制限法】
不老化処置を受けた国民は
処置後百年を以て
生存権をはじめとする基本的人権
これを全て放棄しなければならない

BOOKデータベースをもとに要約すると…
第2次大戦後、終戦の絶望の中で未来に望みを託す通称“HAVI”を導入した日本国。
この不老処置を受けた者は、処方当時の肉体と容姿のまま永遠の若さを獲得する代わりに、100年後には世代交代のため生存権を失効しなければならないと言う
【生存制限法】すなわち「百年法」も一緒に制定されていたのです。

まだまだ先だと思っていた100年目を迎える初の“対象者”を目前に、
この法は遂行かそれとも見送りか…。
政治的目線、警察目線、一般市民目線…それぞれの立場からの見解を、複数の人物が交互に語る群像劇形式で物語は進みます。

不老不死の薬が本当に作る事が出来たらそれこそノーベル賞ものでしょうけど、
そしてそれを身近に入手する事が出来るとしたら私は処置を受けるだろうか?

上巻の中に、
(中略)・・・永遠に生き続けるとなったらとても正気でいられない…永遠に生きるには人間は複雑すぎる――――

という感じの台詞があるのですが、
この小説の真髄はこの一言に尽きるのではないかと私は思います。

HAVIを受けた年齢によっては親の方が子より若返り、高齢者が居なくなる事で老人介護自体が不要になり、夫婦や親子そして家族そのものの必要性を為さなくなる。
定年や老後を気にせずバリバリ働けて衰えない体力と活力がある反面、実年齢と精神面は加齢していく葛藤と、安楽死に向かうカウントダウン。

百年の期限に到達してもまだ死にたくないと反発する市民、それを排除しようとする特別組織、私利私欲と陰謀渦巻く権力者達。

未来に望みを繋ぐ為の政策が思わぬ展開を迎え、善良な市民の生と死にどう決着をつけるのか…ラストは睡眠時間だいぶ削りました(=_=).。oO

近未来の話を描きながら、本筋は今の日本の抱える問題に鋭くメスを入れてくる!
上下巻あるので長期戦にはなりますが、読み始めたら止まらなくなる事必至です!!

命の期限は天のみぞ知る!?
だから限りある時間を精一杯楽しんで 悔いのない人生にしないとですね (´^ω^`)
山田宗樹さん はじめましてな作家さんでしたが、他作品も読んでみたくなりました。

人間らしく。
山田宗樹著『百年法 』 ★★★★★