MIYABIの部屋

いつの日もこの胸に流れてるメロディー

レビュー『虚ろな十字架』


東野圭吾著『虚ろな十字架』
光文社2014年刊行の長編小説です。
春に文庫新刊で見つけて買っといたら、よく見りゃ拙宅に単行本…
持ってた^^;あちゃ~☆やっちまった!!こいつぁうっかりだー。
なんて軽口が叩ける様な明るいものでは全然なかったのであります。


「死刑」が題材というのは解っていたし、ハートウォーミング的展開は無縁て腹積もりで読み始めましたが、思った以上の重苦しさにごっそりメンタル持ってかれました…まぁそれだけ人の命は重いって事なんだけれども。


若い頃は結構エグめのバイオレンス系やホラー、雑食万歳でばくばく読み漁ってた時期もありましたけども今はてんで駄目。
具合悪くなっちゃう|||(´д`|||)|||
あと精神的にくるやつね…。
正にそれがコレ。実際読んで数日はちょっと情緒不安定だったし。


あくまでも私個人の所感ですけど、今現在メンタル虚弱傾向にある場合やご出産を控えている方は、一旦保留にしといた方が健全かと。



※注意 上記以下はネタバレを含みます。
これからお読みになる方は御注意下さいね。



「BOOK」データベースをもとに内容を要約すると…
中原道正・小夜子夫妻の8才の一人娘 愛美が自宅で留守番中、窃盗目的で侵入した中年男と鉢合わせ殺害された。
この男は過去にも殺人を犯し、仮釈放中での再犯だった事から、当然極刑が下されると疑わなかった中原夫婦に突き付けられたのは、不起訴処分の無期懲役だった。

母親が家を空けた直後の犯行に妻 小夜子は殊更自責の念を強める一方、反省の態度が全くみえない被告人と、それを弁護だけでなく更に死刑制度廃止論を唱える司法行政への激しい憎悪と執念で、被告人に死刑判決が下されるも、それは夫婦が望むかたちのものではなかった。

愛娘の死を境にそれぞれ別の道を歩むことを選んだ中原のもとに、ある日一人の刑事が尋ねてくる。
元妻が路上で何者かに刺殺されたと―――


***


読めば読む程にどんどん気持ちが沈んでいくのに、読み出したら頁を捲る手が止まらなくなるのは作者の筆力でしょうか。


国内刑法で一番重い極刑死刑。
当然ながら私本人を含め、家族親類関係にその当事者になった者は居ないので、被害者 加害者家族の心境は映画やドラマの中でしか窺い知ることは出来ないけれど、如何なる理由であれ尊い命を奪った代償は重くあるべきだと思うし、死をもって償うのも然るべきだと思うのね。

だからといって亡くなった人が返ってくる訳ではないし、事実は小説より奇なりじゃないけれど現世に何の未練もなくて自ら望んで無差別殺人を犯した過去の事例もありますし…。


東野さんの小説は無数に散らばってた点と点が、ふと気付いた時は線で結ばれて…って醍醐味にあるんだけど、今回は装丁が青木ヶ原の樹海だったり小夜子殺害の容疑者を取り巻く人物相関図も何となく先が読める感じだったし、いつもの驚愕や衝撃は少なかった様に感じます。


こんな男の命などほしくもないが、せめて奪わねば愛美が浮かばれない―――
公判のたび、被告人席の小さな背中を睨みつけながら思った。  (P59より引用)


この一節が頭から離れません。


死刑制度の有無について。もし私が街灯インタビューか何かで賛否を問われたとして、購読前なら躊躇せずに前者と答えたと思うんだけど、小説を通して多方面からの見解をみて正直よくわからなくなってしまった。

難しい問題だね。


あまり明るい内容ではないのでブログ向きじゃないかなって迷ったんだけど、一応備忘録として。。。


最後に当レビューから心を傷めたり、気分を害された方がいらっしゃいましたら本当にすみませんでした⤵️


「死刑は無力」重いことばだね
東野圭吾『虚ろな十字架』★★★☆☆