MIYABIの部屋

いつの日もこの胸に流れてるメロディー

レビュー『民王』


池井戸潤著『民王たみおう』をご紹介します。
池井戸さんと言えば半沢直樹や花咲舞を世に出した
銀行小説が定石ですが、此方は政界を題材にした長編政治エンタメ小説です。
相変わらず『痛快』の一言に尽きます♪

ここのところ相次ぐ政治家の不祥事に辟易していましたし…
衆議院も解散し、総選挙も来月に控えておりますし…。
私達の暮らしをどんな人に託せば安心か、それを見極める観察眼を養うにもピッタリな1冊になるのではないでしょうか。
 
今度は悪徳政治家に倍返しか~!?
と思っていたらSFファンタジーでした‼

現役内閣総理大臣とその放蕩息子の人格が入れ替わる・・・マンガやドラマでも使い尽くされた常套設定に、何だか池井戸さんらしくないな~
と、正直外した感ありありに思っていましたが…。

就職難に嘆くちょっとおバカでボンボン大学生の息子から見た政界と、
経済政策を掲げながらも企業の実態を知らぬ政治家の奔走劇が、コミカルなんだけど…ホロリとする場面も盛り沢山で、更に脳波観察装置なる怪しい陰謀も絡んだ肩肘張らずに楽しめるエンタメ小説です。

お約束の某元総理の漢字の読み間違えや、某元財務大臣の酩酊記者会見を
ネタにした笑いのツボはしっかり押さえつつ。
日本経済の現状や企業の倫理も織り込まれ、読んでいて『スカッ』と来る親子共々切る啖呵は、爽快かつ痛快で最後まで飽きさせる事なく読み終える事が出来ました☆

空飛ぶタイヤ」「鉄の骨」に代表する社会風刺や組織の闇に鋭く斬り込んだ骨太の企業小説と比べると、どうしても見劣りに感じてしまいますが…
その分読みやすさと笑いを交えながら、自分と社会との関わりを改めて見直す機会が得られるのでは!?と思います。

「今時の若い者は…」とか「だから団塊(世代)は…」と愚痴る前に、
疑似体験がてら世代間の言い分も覗いてみるのも悪くないかも。
ドラマ化したら面白いと思いますけど…民放じゃちょっと難しいかな~。

日本を変える政治家さーん、出てこいや
池井戸潤『民王』★★★★☆