MIYABIの部屋

いつの日もこの胸に流れてるメロディー

レビュー『金色の獣、彼方に向かう』


恒川光太郎著『金色の獣、彼方に向かう』
2011年の同名小説の文庫版です
「日常に潜む異世界」を描く鬼才、恒川光太郎の世界観満載の1冊となっていました!
 
※Bookデータベース+αの紹介になりますが…
未読の方は御注意くださいm(_ _)m
 モンハン好きの私の頭に浮かぶ金色の獣といえば…
金獅子ラージャン(^o^;)いやいや
どんな神々しくそして獰猛な猛禽類が出てくるのかと読み進めれば…見た事のない美しい金色の毛と、神の使いとされる鼬(いたち)。
その鼬に纏わる4つの連作短編ダークファンタジーでした。

以下、収録作品レビューです
「異神千夜」
鎌倉時代の中期の頃が舞台。
元寇や蒙古の襲来の歴史に疎い私には少々不得意なお話。
けれど侵略の歴史を辿ると巫術師や占術師の影が見え隠れし、今まで見た映画等でもその傍らには神使と呼ばれる生き物がつきものだ…。
ホラーとは毛色の違う恐さが此処にある。

「風天孔参り」
時代背景は現代へ。
『竜が最後に帰る場所』の「夜行の冬」を思わせるような…自分の往くべき処(ここでは死に場所!?)を求めて歩き続けると言うお話。
森の中に突如発生する白く光る風の渦に身を投じると・・・
これぞ恒川光太郎テイストな感じで1番好きな話でした♫
 
「森の神、夢に還る」
独白の手紙という手法で、“憑依された”女性を介して姿亡き者の壮絶な半生が紐解かれていく…。
霊験あらたかな雷獣棲まわし森、その獣穴に入ると天国に・・・
前章と何らかの関係性も窺え、鎌鼬という謎に包まれた妖力の片鱗も露になる…。

「金色の獣、彼方に向かう」

少年の元に突然現れた、金色の毛に緑色の瞳…ルークと名付けられた鼬は以前から知っていたかの如く人間の生活に難なく順応していく。
ふたりは離れていても以心伝心、一心同体…。
まるで飼われていると言うより主を意のままに操るかの様に…。
ルークが誘う世界は夢か現か・・・

霊峰富士の樹海が魅せる妖しい魔力と自然と一体化した人間の業…神の禁忌に触れていく様な静かな畏怖に、頁を捲る手が止まりません。

九十九神や妖怪、民間信仰に登場する“もののけ”や“あやかし”等が好きな方…つまり私の様な者には読んで損なしです!
あぁこうして妖たちはこの国に渡って来たのか~…と想像を巡らせるのもまた面白いかと思います(*´∀`)♡

間もなく文庫版『月夜の島渡り』が発売されるという事を知り
『私はフーイー』が未読でしたので、なんとか年内には入手したいと思いますo(`^´*)‼

怪奇譚とファンタジーの見事な融合‼
『金色の獣、彼方に向かう』★★★★☆