MIYABIの部屋

いつの日もこの胸に流れてるメロディー

レビュー『アキラとあきら』


池井戸潤著『アキラとあきら』
昨年5月に文庫新刊で書店に並びその2ヶ月後に最速でドラマ放映。
この流れから文庫書き下ろしなのかと思いきや、8年以上も書籍化されずに眠っていたというのだから驚きです!
同じ音を持つふたりのアキラの“宿命”を描いた青春群像劇です。

ちょうど『空飛ぶタイヤ』『鉄の骨』と同じ頃に執筆されていたのですね。
どうしてこんな傑作を8年も・・・。
と言いつつ私の記憶が確かならば、発売日当日に購入してたと思うけど、拙宅でもやはり1年近く寝かせてしまいました…(いつも私コレばっかり^^;)反省。

700頁とやや質量はありますが、本を閉じる時はいつも後ろ髪を引かれる思いで、先の展開を急かせる筆力は流石です。



※以下ネタバレを含む表現がございます。
未読の方はご留意ください。



ドラマ公式HP&BOOKデータベースをもとに内容を要約すると…

零細工場の長男 山崎瑛(ヤマザキ アキラ)
大手海運会社の御曹司 階堂彬(カイドウ アキラ)
同じ年に生まれ同じ“経営者の息子”として生を受けたふたりのアキラは、環境は違えどどちらも「宿命」を背負い生きてきた。
やがてその運命に導かれるかのように二人は出会い、それぞれの人生が交差した時、かつてない過酷な試練が降りかかる。
逆境に立ち向かう、ふたりのアキラの人生を賭した戦いが始まった。


ドラマ版では静岡の町工場の長男・山崎瑛を斎藤工さん、東京の大手企業の御曹司・階堂彬を向井理さんが演じていらっしゃいましたが、たぶん実写化ありきでなかったとしてもイメージ通りだったんじゃないかと。

ドラマ冒頭では、大手メガバンクへ同期入行を果たした新人研修の場面からスタートしますが、原作は人生最初のターニングポイントとなる少年期から就活に至るまで、200Pに渡りとても丁寧に描かれています。
最初は思春期に辛い経験をした山崎瑛にエールを送りながら読んでいましたが、読み進んでく内に、階堂家のお家騒動の方がヤバいんじゃない!?ってなっていって・・・

過去幾つか池井戸作品を拝読させていただき、いわゆる悪役…居丈高だったり狡猾だったり「コイツ腹立つ!!」って仇敵を沢山みてきましたが、毎回こんな私利私欲にまみれた奴が身内や恋人で、自分が知らない仕事場での顔だったならって思う事があったんですけど、“この夫にしてこの妻あり”な描写が垣間見えたので、モヤっとしてたのが少しすっきりしました。

因みに階堂のお父様は立派な御仁でしたよ。
では誰を指しているのか…は、是非本編をご一読してみてくださいませ。


総合すると、面白いの一言に尽きるんだけど、過去作やドラマの影響で池井戸節に免疫がついてしまったせいか、途中でどちらかが裏切るんじゃ!?とか対立するんじゃ!?とか、つい邪心しながら読んでしまいましたが…ただの私の取り越し苦労でした^^;
仕事も出来て人としても完璧(私が思うに多分イケメン)、天は二物も三物も与え過ぎじゃない!?って思うけど、だからこそ与える試練もデカイってことなのかしら。

読了までに2週間近くかかっちゃったけど、いい本が読めて良かった♪

そして池井戸さんといえば。。。
空飛ぶタイヤ』が6月15日公開。
コレはじめて読んだとき震えたよ私。
長瀬智也さん、ディーン・フジオカさん、高橋一生さん…
他にも錚々たる役者さん揃いですねー。
意外や意外、池井戸さん原作映画化はコチラがお初になるとか!
どんな反撃劇をみせてくれるのか、今から楽しみです。


ドラマも良かった!
池井戸潤『アキラとあきら』★★★★★