MIYABIの部屋

いつの日もこの胸に流れてるメロディー

レビュー『美雪晴れ みをつくし料理帖』

 

高田郁著『みをつくし料理帖シリーズ』
第9段 美雪晴れ

前作「残月」では江戸の名店 一柳の店主 柳吾と芳の再婚話が持ち上がり、ご寮さんの幸せを心から願う澪。そしてただ1人の親友野江ちゃんの幸せの為…あさひ太夫身請けの切り札となる、至極の一品“鼈甲珠”が完成するのです。
物語も遂に佳境!澪自身の心星に向かって前に進むシリーズ第9段。
 
2014年ラストを飾った1冊です。

以下、献立とあらすじです
神帰月――味わい焼き蒲鉾
芳が一柳の店主 柳吾と添う道を選び、歓喜に溢れるつる家の面々。
つる家の常客の好物と知った板蒲鉾、しかし庶民には高価な贅沢品…。
お客さんに喜んで貰いたい…その一心で試行錯誤を繰り返し、家庭での製造は至難とされる逸品がつる家の献立に並ぶ。
料理番付の順位よりもお客様の喜ぶ笑顔の為に…料理人としてだけでなく、
人としても澪は大きく成長しましたね(涙)

美雪晴れ――立春大吉もち
青天の霹靂とも言える料理番付につる家が返り咲き、予想だにしなかった展開に驚愕と動揺を隠せない澪とつる家一同。
その大関位に輝いた一品に、今は亡き又次の生前の面影が重なり、
澪達は複雑な面持ちに…。哀しみと苦難が続いた1年を払拭すべく、
新しく迎える春を寿ぐにふさわしいその料理とは…

華燭――宝尽くし
芳が一柳に嫁ぎ、つる家とも澪ともお別れの日が訪れる。
水害で両親を亡くし、母の様に今迄支えてくれた芳へ捧げる婚礼の寿ぎ膳。
澪が唯一師匠に認めて貰えた一品に、つる家の家族を見立てた具材を包む。
頑なに料理の世界から身を退いたと譲らない若旦那さんが、澪の料理を口にした時に見せる料理人の眼・・・ほんの僅かでも料理の共演も叶い、
断たれていた糸が縫合する…一筋の光が見えた様に思います。

ひと筋の道――昔ながら
伊勢屋の1人娘美緒が臨月の最中、奉公人の不始末でぼやを出し夫の爽助は責任を問われ捕縛の身となり、老舗大店家業没落の危機に…。
また、晴れて芳の夫となった江戸料理界の重鎮的存在の柳吾に後世に名を残す料理人へ澪を育てたいと、差し伸べられた手に戸惑いを隠せない。
「誰の為にどんな料理を作る料理人をこの先目指すのか」
その答えを柳吾から考える時間を与えられた澪は…。

特別収録――富士日和
一度は澪と婚約を交わした小松原こと、小野寺数馬のとある一日のお話。
江戸では珍しい上方風の割籠を広げ、美味しそうに目を細める商人が目に留まり割籠の中身が気になってしまう御膳奉行様♡
4頁弱の短い挿話ですが、別の道を歩む事になっても…今も澪の事を案じてくれているのが垣間見え、胸に暖かいものが込み上げました。

澪の後任の料理人 政吉、芳に代わるお運び女衆 臼夫妻も良い人達で、
澪は安心してつる家を後に出来ますね~(*´-`)

太夫の身請け金を稼ぎ、野江を自由に羽ばたかせたいという途方もない夢に向かって、澪は大海原へと船を漕ぎ始める。
しかしその海は荒波がうねり、女単身で簡単に舵を切れる様な容易い海路ではなく航路を妨害しようとする不逞の賊もそこかしこに待ち構える…。

でも澪には目指すべく心星があるから どんな困難でも道を見失わず、
野江ちゃんの待つ幸せの陸まで船を運んでくれることでしょう(*´ー`*)

遂に次巻 完結…皆の幸せを切に願います・・・
『美雪晴れ みをつくし料理帖★★★★★』