MIYABIの部屋

いつの日もこの胸に流れてるメロディー

レビュー『総司 炎の如く』


秋山香乃著「総司 炎(ほむら)の如く」
新選組1番隊組長 沖田総司を題材にした時代小説です。
土方歳三の生涯を描いた「歳三 往きてまた」
藤堂平助の生涯を描いた「新選組 藤堂平助
新選組三部作”の1つで3作とも読み応え十分です!

学生の頃、日本史は苦手でしたがいつしか幕末の魅力にはまり、
嗜好としては主に新選組を読み漁っております。
理想のタイプは土方歳三です(*ノωノ)♡

壬生狼(みぶろ)と揶揄され、今となれば今日の諸外国との外交・交流を
阻止する役目を率先していた新選組ですが では何故、最後は国賊に落ちた彼等にこんなにも心が引かれるのでしょう…。

元々が武家の出は少なく脱藩も多い、幕府に忠義を立てる義理は特別ない筈の彼等がずっと憧れを抱いた、武士として、男として、
例え錦旗に弓射つ事になったとしても己のが信じた道を全うする姿に、
美しく咲き潔く散る桜のような…“滅びの美学”を思わずにいられないのです。

新選組の活躍の舞台となったのは京。
その発端は新選組局長、近藤勇が当主を務める天然理心流「試衛館」の
同志達が黒船来航以来、地盤の揺らぐ京の治安維持を目的にした
“浪士組結成”に参加し、剣で身を立てる為…今の環境を変える為…
其々の思いを胸に上洛を果たした事から始まります。

知名なところで、永倉新八斎藤一・山南敬介 他、歴史に名を刻む剣豪も
数多くおりますが生え抜きの門弟は局長、近藤勇を筆頭に
土方歳三井上源三郎…そして本題の――沖田総司――

沖田は4才で両親を亡くし、9才で近藤道場の食客として奉公する傍ら、
天才的な剣術に秀で若冠19才で免許皆伝という、剣を振るう為に生まれてきたまさに神の申し子。

幼少の頃から近藤さん・土方さんとは兄弟子…というよりも兄弟の様に
二人の背中をずっと見て来られたのですね。
だからこそ組織の為…よりもこの二人と一緒の夢を追いたかった。

新選組の剣となると誓った日から、陽気で冗談好きな気のいい青年が、
後には退けぬ修羅の渦へと呑み込まれて行く。

自分の死に場所もまた剣とともに…。
そんな沖田総司でさえ敵わなかった、若い剣客の未来を奪った病 肺結核
組織の剣として炎を燃やした男の死の際は、孤独な病床の冷たい畳の上…

この辺は数多ある沖田総司題材書籍とも大差はないですが、
長州浪士 久保裕次郎との友人同士が白刃を交えなければならない葛藤が加えられ、乱世という時代を総司の視線を介して描かれています。

目まぐるしく変化する日常の中で、ずっと変わらずに在る総司の存在は、
近藤・土方の良き心の拠り所だったのではないかと思います。
病状が進み、剣を掴むことも、起き上がることも儘ならなくなくなった
沖田を見舞う土方歳三の今生の別れの場面は、
双方の想いが伝わりすぎて…やっぱり泣けてしまいますo(;д;o)
 
池田屋事件を境に療養を余儀なくされてしまうので、
どの媒体も後半に行けば行くほど…切なさを感じてしまいますね。
 
壬生寺の境内を散策すると、総司が剣術の稽古に汗を流す姿や、
子供達と鬼ごっこで遊ぶ姿を想像し…そっと手を合わせます。
レビューというより“沖田総司について”になってしまいました(^_^;)

デューさぁ~ん♪みてるーー!?
『総司 炎の如く』★★★☆☆