MIYABIの部屋

いつの日もこの胸に流れてるメロディー

レビュー『ようこそ、わが家へ』

 

池井戸潤著『ようこそ、わが家へ』
今春ドラマ化されると聞き、再読かねて流し読みしました。
Welcome!という割には装丁がやや暗め・・・
“我が家”に激しい憎悪を抱き執拗な嫌がらせを繰り返す、
顔が見えない“名無しさん”を一家総出で撃退する長編サスペンスドラマです。

池井戸さんの本は幾つか読ませて頂きましたが。
ドラマでも一斉を風靡した権力に屈しない熱血漢な銀行員や、
不遇に喘ぎながらも大企業に真っ向から立ち向かう中小企業の経営者云々、気骨稜稜の主人公達を沢山みてきたなかで、この倉田太一は真面目だけが取り柄という中年の銀行出向社員。

帰宅途中の駅のホームで、たまたま並んだ列へ割り込んで来た男に注意をしたことから逆怨みされ、報復を目的にした悪質な嫌がらせの数々に倉田家の平穏な日常が脅かされていく。
一家の平和を守る為 長男 健太、長女 七菜、妻 珪子の家族の闘いが始まる。

更に出向先のナカノ電子部品では在庫と帳簿上に二千万超の相違が判明!
営業部長の真瀬に不正疑惑を持ちながらも、“銀行からの出向総務部長”と敵愾心を剥き出しにする真瀬に対して、強く追及する事が出来ずにいた…。
融資元の銀行マンとしても、この会社の為にも不正を黙認する事は出来ない。
裏帳簿の実態を暴くもう1つの倉田の闘いが始まるのです。

2つのパートが同時進行しながら、家族の秘密や敵役の狡猾さ、仕事への情熱、家族の絆等々…伏線を散りばめながら事件解決に向けて展開していく描写は、相変わらずおもしろかったです☆

冒頭の割り込みの場面から全てが始まるのですが、
この物語の1番の怖さは偶然居合わせただけ、日頃接点の有無に関わらず素性を知らない“名無しさん”からある日突然、攻撃の対象にされてしまう…という誰にでも起こり得るかもしれない身近に潜む恐怖に、背筋が寒くなりました。

犯人とは反対に、倉田家からは個人を特定していく手立ては乏しい。
警察も物的証拠がない以上動いてくれない。
正直者が馬鹿を見るこの不条理さにヤキモキしながら、ついでを言うとこの“池井戸史上最弱ヒーロー”と呼ばれる主人公の温厚でお人好しな性格に
「なんでそこでもっとガツンと言わない(`ロ´;)‼」
ちょうどこの小説が刊行されたのが半沢直樹のドラマと同時期だっただけに、行き場のないもやもやを感じてました。

そんな父に代わり怒りを露わにするのが大学生の息子、健太。
数少ない情報を元に犯人を自宅におびき寄せる作戦を主体となり決行します。
彼のお陰でだいぶ溜飲を下げる事が出来ました( ο´Д `ο)
ドラマではこの彼が主人公となり、月9初主演となる嵐の相葉くんが役を演じるとの事なのでそちらも楽しみですね♪

お父さん頑張れッ(。>人<。)!!って気持ちでスイスイ読めました。
ドラマも今から楽しみです~♫

池井戸潤さん初の文庫書き下ろしです。
『ようこそ、わが家へ』★★★★☆