MIYABIの部屋

いつの日もこの胸に流れてるメロディー

レビュー『夜市』


今日は私の好きな本をご紹介します。

今でこそ好みな作家や、賞や映画で見聞きしている作家は沢山いてそこから派生して読みたい本が増え、入手する訳ですが…この『夜市』は作者名も知らず事前知識も皆無の、
正にジャケ買いした1冊です。

それ以来、恒川光太郎さんが大好きでほぼ全作読んだ…かな?多分(^^;

本書は日本ホラー小説大賞受賞作品で、
恒川氏の著書は角川ホラーレーベルから多数出版されているのですが、
魑魅魍魎や、怨念、アンデッド系のホラーというよりは知らない間に異世界に迷い込み、その閉鎖された空間に囚われる得体の知れない恐怖に何とも気持ちを不安にさせられるのです。

ファンタジーとホラーを融合したテイストに、懐古的な街並みやもの悲しい季節の風情が映像で浮かぶ、不思議な魅力に心奪われる作家さんなんです。

こちらは表題作「夜市」と「風の古道」の2作の短編が収録され、
恒川氏のデビュー作となっております。

以下レビューです。

「夜市」
女子大生のいずみは幼馴染みの裕司に“夜市”に行こうと誘われる。
夜開かれるフリーマーケットのつもりで承諾した彼女は足を踏み入れた市場の異様な雰囲気に違和感を感じ始めるのです・・・
獣や異形した人間らしき店主や店に並ぶその商品は、法外な金額と形を持たない能力等怪しい品々が陳列している。
手に入れる為には金を払うか、人魚姫のように何かを得る為の引き換えにその額に見合った何かを差し出せば取引が成立。
その幼馴染みは昔、ある才能を手に入れる為に売った家族を買い戻す理由で夜市を訪れたという事を知る。
夜市のルールは買い物をしなければ元の世界に帰る事は出来ない。
その兄弟の結末は・・・!?

「風の古道」
12歳の夏休み、親友のカズキとちょっとした探検気分で神社の裏側に続く抜け道を進むと、そこには違和感を覚えずにはいられない町並みがあった。
ポストも電柱もない未舗装の道路、木立の間をすり抜けて行く車、すれ違うこの世の者ではない何か…
日本のそこかしこに存在するという“神様の道”に迷い込んでしまった2人。
そこで出会った放浪の旅を続ける青年レンと共に、帰り道を探す主人公。
レンも元は主人公の世界の住民であったと語る…レンが旅を続ける理由とは!?そして少年はこの不思議な世界から出る事が出来るのか・・・・。

というパラレルワールド迷い込み系の話が2作収録されているのですが、
私は表題作よりも「風の古道」の方が好みだったかな。
どことなく千と千尋の神隠しを思わせるノスタルジックな風景とか、ちょっと昔を懐かしむ様な匂いを感じるお話なんです。

恒川さんの作品には動物や植物を模した怪しげなキャラクターが数多く登場し、
時には残虐的な場面も出てくる話もありますが、読んだ後に心に温かいものが感じられる作家さんなのです(*´ω`*)

間もなく新刊される『スタープレーヤー』の前に斜め読みして、
これ書いてたらまた読みたくなってしまった(^^;

1章が100頁くらいなので、半日もあれば読めてしまうと思います。

夏から秋にかけて是非お勧めです♪
『夜市』★★★★★